自分らしく、松山でイマを生きる人にインタビューするコンテンツ「マツイマ」。
今回のゲストは、松山市の中の川通りにカスタムメイドのジュエリーショップをオープンさせたばかりの谷口堅一郎さんです。20歳の頃からジュエリー職人として腕を磨き続けてきた谷口さん。出身は福井県、長く勤めた会社は東京都と松山に縁もゆかりもない彼が松山に店をオープンさせた経緯とは?さっそくお話を伺いました。
谷口 堅一郎
1975年福井県福井市生まれ。ジュエリーデザイナー兼クラフトマン。高校卒業後ミュージシャンを夢見て東京に上京するも夢破れて帰郷。福井市内のジュエリー工房に就職後、ジュエリー職人としての仕事に魅了され、再び東京で勝負することを決意。都内の大手ジュエリー会社に13年勤めた後、松山へ。この夏、デザインから製作まで一貫しておこなうカスタムメイドのジュエリーショップ「here to stay」を松山にオープンさせた。
夢破れて見つけた、次のステップ
6月にご自身のお店をオープンさせたばかりの谷口さんですが、まずはジュエリー職人になるまでの経緯を教えてください
谷口さん:高校を卒業した19歳の頃に一度、東京に上京してるんです。その頃は音楽で食べていこうと思っていたのですが、音楽で生計を立てることはなかなか難しく、1年足らずで地元に戻ってしまいました。正直、東京に負けたといった感じです。
地元に帰って、自分には何ができるんだろと考えた時に、幼い頃から手先が器用でモノを作るのが好きだったということもあり、地元の小さなオーダーメイドのジュエリー工房に就職しました。
手先が器用で何か作りたいと考えて、ジュエリーの世界に飛び込んだ感じですか?
谷口さん:本当は下心もあったんですよ(笑)。ジュエリー=お金持ちになれるとか、モテるとか・・・そういう考えで。ただ、実際にジュエリーの世界に飛び込んでみると、「こんなに汚い仕事なの?」と驚きました。金属を削ると粉は出るし、磨くと手は汚れるし、摩擦で熱くなって皮はめくれるし、華やかなイメージのジュエリーの世界はこんなに大変なのかと実感する毎日でした。
自分の得意に気がつく
どのようにジュエリー職人としてステップアップしていくのでしょう?
谷口さん:小さな工房だったので仕事をしているのは、社長と僕しかいなかったんですけど、朝、出勤したら社長にコーヒーを淹れるところから始まるんです。でも、味が違うとザーッとシンクに流されます。今やるとものすごいパワハラで訴えられそうですけど(笑)。作業を教えてもらう時も1度しか言ってもらえない。それを必死でノートに書き取って作業をするんです。
そして、社長が出掛けている間に作業を終わらせておくように言われるんですけど、絶対にできない仕事内容なんです。でも、出来てないとめちゃめちゃ怒られる。そんな環境でした。
かなり理不尽なことを言われている環境だと思うのですが、すぐに辞めようとは思わなかったのでしょうか?
谷口さん:その時は辛いという感情が大きかったように思います。ただ、自分がやっている作業自体は嫌いではありませんでした。社長のプレッシャーはあったのですが、その中での技術の向上は確実にあったと思います。出来上がったジュエリーが良いのか悪いのか社長に確認をしてもらう時、ダメな時はダメと厳しく言われるのですが、良い時は何も言われないんです。そうやって、何も言われないときは「きちんとできている」と理解していきました。
結局、この工房には6年勤めたのですが、褒められたことは、ほんの数回しかなかったように思います。
特に得意な作業はあったのでしょうか?
谷口さん:ワックスという蝋のような塊があって、それをジュエリーの型に削り出して原型を作っていく作業があるんですけど、その作業が、あっという間にできることに気がつきました。自分でもすごく早くできたな、簡単にできてしまうなと感じるところがあって、ジュエリーを作るにあたって、この作業は自分に合っていると感じていました。
それが分かってきて、自分の力がもっと多くの人に対して通用するのか挑戦したいという気持ちが出てきました。
そんな頃、東京に遊びに行った際、たまたま入ったコンビニでなんとなく求人雑誌を手に取りました。そこに掲載されていた、東京勤務のジュエリー職人の求人が目に飛び込んできました。なかなか求人として表に出てこない職種なので「これだ!」と思い、その場で電話をしたのです。
☆第2回目は、運命に導かれるようにジュエリー職人の求人を見つけた谷口さん。地元の福井を出て東京にあるオーダーメイドの大手ジュエリー会社で働き始めます。谷口さんの技術は東京でも通用するのでしょうか。
here to stay
愛媛県松山市湊町4-3-7 1F
TEL:089-909-7927
営業時間:10:00〜19:00
定休日:水曜
URL:http://www.heretostay.jp
(2020年6月1日現在)
- Written by: Mai Hirose
- Date: 2020.06.12