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【松山のひと】谷口堅一郎さん③ 点が線になり、線が絵を描く。全てのことを学びと捉え、 世界でひとつだけのジュエリーをつむぐ

  • CATEGORY: 松山のひと
  • DATE: 2020.06.26

自分らしく、松山でイマを生きる人をインタビューするコンテンツ「マツイマ」。

カスタムメイドのジュエリーショップ「here to stay」を6月にオープンさせたばかりの谷口さん。第1回目ではジュエリー職人になるまでのお話を中心にお聞きしました。第2回目では、腕に自信をつけ東京のジュエリー会社に就職するものの、様々なことが重なり13年勤めた後、退職。第3回目では、いよいよ松山に移住し仕事を再スタートさせます。さっそくお話を伺ってみましょう。

<第2回目を読む方はこちら

谷口 堅一郎

1975年福井県福井市生まれ。ジュエリーデザイナー兼クラフトマン。高校卒業後ミュージシャンを夢見て東京に上京するも夢破れて帰郷。福井市内のジュエリー工房に就職後、ジュエリー職人としての仕事に魅了され、再び東京で勝負することを決意。都内の大手ジュエリー会社に13年勤めた後、松山へ。この夏、デザインから製作まで一貫しておこなうカスタムメイドのジュエリーショップ「here to stay」を松山にオープンさせた。

会社を辞めてからの再スタート

長く勤めた会社を辞められた後はどのように過ごされたのでしょう?

谷口さん:一旦、気持ちをリセットしたくて、語学留学でセブ島へ行きました。英語が話せればいいな・・・という思いはずっとあったので、ただ、途中で体調を崩してしまい、やむなく帰国。その後は自由が丘にある宝飾店で働き始めました。

ジュエリーを作りながらも、将来は自分の店を持ちたいな・・・という気持ちは漠然と持っていました。もともと人見知りということもあり、接客の部分はなんとかしなきゃと思っていたので。時計売り場に配属になったのですが、ずっと座って作業をしていたので、立ってお客様を待つだけでもかなり大変でした。その上、僕の接客では、お客さまがなかなか購入に至らない。先輩から教えてもらいながら、少しずつ慣れていきました。

接客をしていると、売れそうな時ってなんとなく分かるんです。無理に買わせようとしているわけでは決してないのですが、お客様とお話しをしながら、購入して頂いた時は、今まで体験したことのない喜びがありました。これまではお客様の反応を見ることができなかったので、人が喜んでいる姿を見ることでこんなにも嬉しい気持ちになるのかということを知りました。

その後、松山へ移動するのでしょうか?

谷口さん:はい。会社の元同僚でずっと自分を支えてくれている彫金師のパートナーがいるのですが、彼女の知り合いでCADを使ったジュエリー制作ができる人を探している会社があるという話があり、その会社が松山だったんです。

「一度、松山に遊びにきたら?」と、その会社の社長に言っていただいて、松山へ遊びに行きました。その時の印象がすごく良くて、ちょっと車を走らせると海があり、癒されるな・・・と感じました。もちろん、僕自身も田舎で生まれ育っているので、華やかな都会への憧れもあり、東京を離れることにすごく迷いはありました。ただ、東京は遊ぶところと割り切って、暮らすには家賃も安いし、空港も近いので遊びに行こうと思えばすぐに行けるなと思い、松山に移住することを決めました。

松山で働いていた会社はジュエリーの卸の会社なのですが、卸というのは小売店さんに商品を売るんです。「原型」が1つあったら何個も同じ型からとって、同じものを複製するものでした。オーダーメイドのジュエリーを作っていたので、正直、少し物足りない部分がありました。

その会社には結局4年勤めて、そろそろ年齢的なものを考えても自分でやり始めなくては・・・と思い、独立する決心をしました。

店名の「here to stay」の由来は?

谷口さん:東京の会社に勤めている頃、実は会社に内緒でroomsという日本最大のトレードショーに応募しているんです。オーデョションがあるので、何点か作品を自分で作り応募したところ審査に通って、さらに「新人枠」という一度しか応募できない枠があるのですが、そこに選ばれました。

トレードショーの前夜祭には有名なセレクトショップの社長さんなどもいらして、roomsを主催しているアッシュペーフランスの方が「今回一押しのジュエリーデザイナーの・・・」と紹介してくれるのですが、緊張と同時に舞い上がってしまって、どうすれば良いのかが分からずその場をただやり過ごすことで一生懸命でした。

roomsで展示した谷口さんのジュエリー。この時のブランド名が店名に。

自分の想いだけで応募したものの、名刺をデザインしたり、展示する為のある一定量のジュエリーを用意したり、たくさんのことをクリアしなければなりませんでした。その時に「絶対に1人じゃできない!」ということに気がついて、そこから仕事仲間や友人に助けてもらったんです。

roomsを手伝ってくれた仲間たち。「ひとりでは何もできない」と気がついたことは、大きな気づきだった。

結局、このトレードショーの3日間は何も起こらなかったんです。roomsに出たら勝手に何かが動き始めるんだろうなと甘く見ていたところがあって。この時つけたブランド名が「here to stay」で、いつか自分が店を出すことがあれば屋号にするかコレクション名にしようと温めていたものです。

21歳くらいの時に、「自分はこのジュエリーの世界で生きていくんだ!」と腹をくくった時があって、その時の思いなどを「here to stay」に込めています。

お店を東京や地元の福井ではなく松山でオープンさせた理由は?

谷口さん:福井は人口を考えても厳しいかな、というのがありました。東京に戻って始めようかとも考えたのですが、東京でテナントを借りるにしてもお金がものすごくかかるし、人口が多いので、商圏と捉えると良いのでしょうが、その分ライバル店も多い。そう考えた時に、せっかく縁あって松山にいるし、ここでやってみよう!と決めました。

どのようなお店にしていきたいとお考えですか?

谷口さん:お客さまのために一点ものを作る。要は在庫を置かずに、お客さまの希望を形にしたジュエリーを作りたいと思っています。カスタムメイドでジュエリーを作りたい時って特別な理由があると思うんです。例えば結婚指輪だったり、娘さんの二十歳の記念だったり、人生で大切な時期や節目の時だと思います。そこに自分が携われたら・・・と。

5年後、10年後に「この指輪はあそこで作ってもらったんだ」と覚えていてもらえるような、人の人生の記憶に残れるような店でありたいと願っています。

谷口さんが作ったリング。お客さまの希望を聞きながら丁寧に仕上げる。

 

この日の取材で谷口さんが身につけていた真珠のネックレス。男性でも一連のパールネックレスを着けられると啓蒙活動中!

中野川通り沿いにオープンした「here to stay」。青い扉が目印。カスタムメイドのジュエリーを考えている人は、気軽に店の扉を開けてみて。

 

コメント

穏やかな雰囲気の谷口さんですが、ジュエリーの話になるととても強い眼差しでお話ししてくださいました。もしかすると、人の寿命よりもはるかに長いかもしれない、一つのジュエリーに人生を掛けるという覚悟が伺え、お話を聞きながらロマンを感じずには入られませんでした。

 

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here to stay
愛媛県松山市湊町4-3-7 1F
TEL:089-909-7927
営業時間:10:00〜19:00
定休日:水曜
URL:http://www.heretostay.jp
(2020年6月1日現在)

  • Written by: Mai Hirose
  • Date: 2020.06.26